媚びたっていいじゃない
ポエムだっていいじゃない
造り手の想い、空間、サービス
五感を通じ感じたコト
私なりの解釈でお届けします。
東京 銀座
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" どこからか秋風が忍び込み
意に捉えぬまま出ていった。"
十余年に渡り、
公私共に大変世話になった
第二の親父を偲ぶ会。
生粋の江戸っ子。
語気荒く、威勢に満ちていて。
歳を重ね、歩幅は小さくなろうとも
ネオンに照らされたその背中は、
いつも誰より大きく見えていました。
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"さいごは誰にもかまわれることなく
一人でゆっくりしたい。"
そんなこと言うもんだから、
その後の僕は皆んなから非難囂々です。
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今日も僕らは変わらず
貴方の好きだった店で、
楽しく酒を酌み交わしています。
皆んなの変わらぬ笑顔は、
貴方の志を偲ばせてくれています。
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また秋風が吹いて、街路樹が揺れた。
透き通った冷たい空気が、
酔い身に心地よくて。
それは過去の記憶を、
それとなく拭い去る清涼な風で。
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神奈川 川崎
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" まずは出汁を飲んでみてください。 "
こぼさぬようにと
酔を振り払い真剣に受け取る。
震える指先、カタカタと音を鳴らす。
肉厚で逞しい曲線美。
ゆらゆらと輝く、蠱惑的な金色の水面。
泳ぎたい。
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椎茸嫌いを即死させられる
ピュアっピュアな純度100%の出汁。
一滴足りとも逃さぬよう、
慎重に出汁をすすり、嗜む。
特有の芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。
口を開きたくない、
香りすら逃したくない。
追いかける酒のまろみが
香りと絡み合い、頭の後ろへ突き抜ける。
椎茸好きも昇天させる味覚。
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椎茸、ねぎ、ししとう、ヤングコーン。
焼き鳥だけでなく
野菜串も主役級の存在感を示す。
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1時間だけのつもりが、
またついつい長居してしまった。
過ごす時間が出汁のように
じんわりと柔らかく
身体に沁み込んでいく。
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東京 日暮里
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" 秋鯖、肉味噌、鬼おろし。 "
煌めく飴色の背、
抱えきれず滲み出す脂。
今日イチのビジュ担。
フワッと沸き立つ上品な香り。
角のないまろやかな甘みと、
とろけるような脂の旨みが溶け合う。
白米欲しい。
添える肉味噌と鬼おろしを摘んで、
泡立つ黄金色で迎え撃つ。
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焼き魚をキチンとしたお店で食べることが、
一番の贅沢に感じる今日この頃。
秋が深さを増すごとに
味蕾が感じる味わい深さも
その深度を増していく。
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東京 六本木
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" Fall in loveィオリ "
頭文字を打てば
予測変換の一番最初にくるぐらい
肌に馴染んだ場所。
日々深くなる肌寒さも
ボッカーノへ行けると思うと
不思議と心地良さに変わる。
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"ヒラメを詰めたラヴィオリ フレッシュトマトソース"
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フレッシュトマト、ボンゴレ
爽やかなアーリオオーリオ仕立て。
生地のなみなみが心に優しい
ナイフを入れると
ホロホロの淡白な白身が顔をだす。
湯気立つヒラメの引き締まった旨みが
胸の奥にグッと沁み込んでいく。
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ぬくもりいっぱい
身体の芯から満たされて。
秋の空気を胸いっぱいに吸い込んで
夜空を飛び回りたくなるような感覚に
なんだか胸がドキドキする。
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東京 六本木
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" Unagi caramélisée "
あ胸を突くほど漂う
揺れる金木犀の芳香。
窓の外、行き交う人々が
移ろう季節をかき混ぜる。
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鰻はキャラメリゼに
山葵のクリームで。
色気のあるテクスチャ。
さくっフワッじゅわっとくる
官能的な食感。
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日本濃度つよつよな食材を
クラシカルな仕立てに。
ビールとワインを添えて
解釈を咀嚼する。
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居酒屋のような気楽さで、
自由な心でフレンチを愉しむ。
食文化ほど隔たりなく
多種多様に入り混ざるものもない。
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秋風が吹いて酒面が揺れる。
季節も料理も人も香りも
全てが手を繋ぎ合い、移ろい巡っていく。
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○オマール海老のポシェと
フレッシュほおずきを
スパイシーなアボカドのフォンダンと共に
○炙りうなぎのキャラメリゼ
山芋のフリットと合わせ
わさびクリームをアクセントに
○マグレ鴨のロティ
甘酸っぱいシュールージュのエチュベといちじくを添えて
○シャンピニオン
ヘーゼルナッツプラリネのムースと
ブラッドオレンジのソース
ヨーグルトのソルベを合わせて
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" もはや呪いなのよ。"
"あれ?箸なんてありましたっけ??"
箸先で感じる
シャインマスカットの感触が心地良い。
"ずいぶん前から用意してるよ。"
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気がつけば半年ぶり。
どれだけ強く印象を残していても、
時間を空ければガチで忘れられそうで。
でもなぜかその緊張感に
居心地の良さを感じてしまう。
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柑橘の香りたっぷり
秋刀魚のベッカフィーコ
箸でつまんで深呼吸、
香ばしい余韻と懐かしさが
身体中を駆け巡る。
どんなに時間が空いていても
このひと口ですぐに飛び越えてこれる。
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何かを成し遂げたような、
言い知れぬ充足感に包まれ店を出る。
"またね、次はすぐ待ってるから。"
何気ない嬉しいひと言が、
なぜか呪いのように耳に残る。
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東京 日暮里
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" 成り行きを見守る。"
こんがりとしたバケットの上に
カニ&ウニが鎮座する。
" これは絶対白ワインだ。"
有識者は息を巻いて語る。
" ビールの可能性も捨てきれないかと。"
一縷の望みにかけて囁きかける。
キンッキンの辛口白ワイン
vs
冷気漂う清らかなビール。
幾度となく繰り返されてきた夏場の論争。
経験上、こちらにもそれなりの手札はある。
よかろう、ならば戦争だ。
" 白ワインに決まってるだろ
そう仕立ててもらってるんだから。"
完全に噛み付く場所を間違えた。
前歯が軽やかさを伝える。
じんわりと味覚に響く
濃厚で支配的な旨みが、
今日の全てを忘れさせてくれる。
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千葉 鴨川
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" しけの天津に魚あり。"
夏の終わり、夕刻の港町。
堤防で横になり、
夕食のはじまりを待つ。
太陽をたくさん吸い込んだ
コンクリートがじんわりあたたかい。
海を浮かべたような真っ青な空。
目を瞑り、のびをする。
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原付の釣り人
日陰で一服する漁師
明日の支度をする船人
低く空を飛ぶカモメ
水平線に浮かぶ夏雲
背後の愛宕山から届く蝉の音。
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ちゃぷんちゃぷんと
防波堤に小波が届く。
あたたかさと相まって
湯船に浸かっているかのような心地。
沈む夕陽に手を伸ばす
指先から海の香りがする。
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"天津千軒釣り家業、しけの天津に魚あり。"
かつてそう謳われるほど、
多くの水揚げを誇った天津漁港。
その地において明治創業、
漁協組合入札権保有の老舗旅館。
待ち受けるは、溢れんばかりの房総の幸。
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深呼吸ひとつ、港をあとに
居住まいを正して夕食と向かう。
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千葉 鴨川
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鴨川小湊の奥座敷。
海と山、両者の風に抱かれる
自然派イタリアン。
勢い余って20分前到着。
玄関前にお行儀よく座る
かわいらしいレセプションに
時間まで相手をしてもらう。
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フワリとしたマゴチを
じっくりと焼いた肉で包みこむ。
溢れるだす強い旨みを、
野生味あるゴーヤが爽やかに受け止める。
トコブシはバターソテーに。
滲み出すダシとバターのまろやかさ
どこか懐かしくてやさしい。
これぞ海の味覚。
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蛸壺漁で水揚げされたタコは唐揚げに。
ドルチェは無花果。
それぞれ赤白のワインで煮込む
ワインのソルベを添わせて
リッチな仕立て。
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当店は化学調味料、冷凍素材不使用。
有機栽培のハーブティー7種類
コーヒー豆は森林に自生する代物。
店名通り幅広く拵えたナチュラルワイン。
予約制にて、
ランチはおまかせ4,800円(税込)
ディナーはおまかせ6,000円(税込)
ワインペアリングは3,500円より。
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この境地に辿り着くまでに、
シェフの料理人として生きてきた
長い年月があるんでしょう。
ワンパクなまでに
個性豊かな房総の幸。
それらをまとめ上げる
確かな矜持、添える遊び心。
足を運んで良かった
手放しでそう思える。
この胸の高鳴りときめきメモリアル。
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神奈川 川崎元住吉
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" 夕立で呑める。"
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窓の外が急に騒がしくなった。
緑の中、騒ぎ出す蝉の声
コンクリートから立ち昇る夏の香り
こんもりとした入道雲
どこかで響く遠雷。
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久々に押すエアコンの切ボタン
ベランダに出て大きく伸びをする。
雨粒ひとつ、大きく跳ねかえる。
慌てて室内に逃げ帰る。
涼風に乗ってフワリと届く夏の残り香。
ふと脳裏に蕎麦とビールが浮かび上がる。
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窓の外、雨はまだ止まない。
蕎麦をすすり、酒を呷る。
"雨、また強くなってきたね。"
"天ぷら頼んじゃおっか。"
飲み干す杯に雨を注ぐ。
なんとも気分の良い雨宿り。
夕立は、夏の酒呼水。
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神奈川 横浜 日吉
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" 夏の余韻。"
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海帰り、夕方の風、遠くで響く蝉時雨
まだ波に揺られているような感覚。
日焼けの肌に大理石のカウンター
ひんやりと気持ちいい。
モダンを可視化した落ち着きのある空間に
心はさらに熱を帯びる。
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@maya_foodie_yokohamaさんのご投稿を拝見し、
そのまま当日の予定を吹き飛ばしてお邪魔したフッ軽夜。
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"すっぽん焼売"
肉よりも肉肉しく、
魚よりもさっぱりと。
小さな泡音を立てながら
白浜に届くさざなみが、
砂をならしながら
スーッと遠浅に引いていくような
澄み切った余韻。
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どっしりと和食に軸を置きながらも
肩肘張らずに摘めるアテとして落とし込む。
そのずらし方がなんとも憎らしい。
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帰り道、日焼けの肌はまだ熱い。
それとは裏腹に
心の中は空っぽで、
解けるような繊細さが
ふわふわじんわりと広がっていた。
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東京 浅草
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" 納涼。"
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はじける炭の音ひとつ、暑さを払う。
大ぶりの活き鮑、火鉢に揺れる盆踊り。
分厚いその身を噛み締めては呷る。
追いかける肝、一箸摘んでまた唸る。
胃の腑に構える大火鉢。
焚べる夏の酒悦、さらに猛々しく唸る。
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またひとつ炭がはじける。
例年にも増して
払いまくったこの夏の暑気。
まだまだ猛り踊る、下町の夏夜。
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東京 日本橋
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" 言葉にならないことがあるから
この世は素晴らしい。"
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約束の時間には
なんとか間に合いそうだ。
プレゼントの袋を揺らしながら
慌ただしくタクシーに乗り込む。
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"少し遅れます。すみません。"
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家から店まで徒歩5分の主賓からのLINE。
止まらぬ汗を拭いながら、
サラッとした質感のショッパーに目を落とす。
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1日1組限定、
完全貸切の日本料理店。
微に入り細を穿つ、
堂に入ったもてなしに心がやわらぐ。
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大切な人を招くには最高のお店。
大切な人を待つのにも最高なお店。
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誰かを待たせるよりも待つ方がいい。
これから訪れるひとときに、
ワクワクする時間を与えてくれる。
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○きす三つ葉巻き
○煮だこ
○とうもろこしすり流し
○蓬が島 かれい造り
○鱧ざく
○あおりいか からすみ掛け
○じゅんさい鍋
○鯛めし
○ルナピエナ
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神奈川 川崎 元住吉
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" パスタ沼。"
パスタは常に10種類以上がオンリスト。
乾杯のグラスが乾くのを忘れ、
"ああだこうだ"と
いつまでも決めあぐねいている
この時間がなんとも愛おしい。
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○渡り蟹とトマトクリームのリングイネ
○カルボナーラ スパゲッティ
○北海大アサリのボンゴレビアンコ
○海老とアスパラのアメリケーヌソースの
フェットチーネ
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メインとは目を合わせず、
パスタ2品なんてこともしばしば。
〆ラーならぬ〆パスタがあってもいい。
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立ち昇る湯気、
漂う香りに心が茹で上がる。
はじめましてのひと口は、
今も変わらず最高のワクワクを与えてくれる
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銀座くらはし・銀座くらはしhanare
東京 銀座
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" なんだかよく分からないけれど、
めっちゃ美味いです。"
紹介した身として、
これ以上の言葉はない。
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むせ返るような夏の匂い。
身体をすり抜けていく熱風が、
これから始まる大一番を予感させる。
手繰り寄せた今日この日。
待ちに待った年に一度の祝い酒。
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飲めや歌えや 呑兵衛踊れ
たまの騒ぎに酒瓶が揺れる 。
巡りわたる歓びの水
往きは酔い酔い 今宵も善酔い 。
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美酒あり、良縁あり、知友あり。
これに勝る肴なし。
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神奈川 川崎元住吉
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" "夏化粧 "
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夏はなんだかやたらと
陽が高いうちから飲みたくて。
夕方を目前にした土曜15時。
この歯がゆい時間帯から
気の利いた肴で飲れるという
この上ない至福。
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○焼き茄子とスイカ浸し 土佐酢ジュレ
○カジキマグロの梅しそフライ
○鶏せせりとゴーヤの塩麹炒め
○穴子の白焼き 茗荷ソース
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煌めくスイカに魅了される。
土佐酢の柔らかな酸味が
西瓜に一層の"らしさ"を添える。
少し酸っぱくて、飛び抜けて甘い。
夏を待つ全ての方に届けたい味覚。
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滋味にほんのり寄り添う夏化粧。
食べ進めるほどに
酒に冷えた胃の腑が熱を帯びる。
じんわりと滲む
その汗もまた夏化粧。
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東京 目黒自由が丘
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" 夏がこぼれる "
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茹だり溺れそうな梅雨の夜。
雷門通りの賑わいから
逃がれるように飛び込む
情趣に満ちた日本家屋。
門から続く石畳を早足に抜けて、
木の匂いのする玄関へ滑り込む。
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下足番の方からの、
"いらっしゃいませ。"のひと言に
なんだかスッと心が軽くなる。
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○前菜
無花果白掛け・枸杞
法蓮草浸し・糸花
穴子笹巻寿司・厚焼き玉子
蛸柔らか煮・蓮根煎餅
巻海老
○御椀
鮎魚女葛打ち・白芋茎
相混ぜ野菜・木耳・柚子
○温物
焼き胡麻とうふ
○御造里
鮮魚盛り合わせ 芽物いろいろ
○煮物
京都加茂那須・冠茸
鴨ロース・おくら ふり柚子
○焼き物
旬の幸 万願寺・酢取り茗荷
○留め肴
鱧玄米揚げ
枝豆・玉蜀黍東寺揚げ
新丸十・酢橘
○食事
玉蜀黍ご飯
赤だし・香の物
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創業は昭和27年。
登録有形文化財にも指定された
数奇屋意匠の老舗料亭。
三代に渡り積み上げてきた伝統は、
由緒に違わぬ風格ともてなしに形を変え、
訪れる人を楽しませる。
歴史、空間、味覚。
滲み出す風情が四季を纏い、
色濃く今を感じさせてくれる。
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うだる夜に飲み干す一献。
鼻先をくすぐる和の香りが、
この身に涼を教えてくれる。
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東京 目黒自由が丘
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" 日常の延長線上にある非日常 "
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駅前の賑わいから逃れて、
味わい深い銘店が立ち並ぶ
自由が丘広小路ならぬヒロストリート。
その3階に構える
落ち着いた佇まいの当店。
カウンター8席、テーブル2卓
肌馴染みの良いやわらかな空間。
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○山形豚 自家製サルシッチャとじゃがいものクリーム
○山利釜あげシラスと青唐辛子のペペロンチーノ
からすみがけ スパゲット
○極みエノキとルッコラのサラダ
○真イワシのベッカフィーコ
ナッツやチーズをつめたパン粉焼き
○とうもろこしの冷製スープと
チーズスタンドモッツァレラチーズ
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その馴染みやすさから
見事に反比例する骨太なイタリアン。
ひと口で伝わる造詣の深さ。想いの分厚さ。
距離の近さゆえ、
カウンターに座ればそこはシェフズキッチン。
ひと皿が仕上げられていく様に
ワクワクとよだれが止まらない。
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当店は18:00OPEN、26:00CLOSE。
二軒目としての選択もできるという、神がかった尊さ。
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仕事終わり、
頑張った自分へのご褒美に。
陽が落ちる前の休日の乾杯に。
終電を忘れるぐらい、騒いだあとの〆パスタに。
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振り返れば、いつもそこにいてくれる
頼りがいのあるイタリアン。
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神奈川 川崎 新百合ヶ丘
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" つまみ。"
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川の流れに身を任せるように
目の前を過ぎて行く
日常のアレやコレや。
さらさらと流れていくモノあれば
所在無げにいつまでも
くるくると漂うモノもいる。
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心の縁に溜まったモノを
手のひらで掬ってかざして見せる。
形、色、重さ
人それぞれで違うモノ。
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それはきっと
とても酒に合う。
分かち合う
それぞれの人生が
なによりの肴。
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